臨床倫理の基本指針

臨床倫理の基本指針

基本的人権はもとより当院の「理念・基本方針」、「患者の権利と責務」などに基づき、すべての職員が臨床における様々な問題に対応し、患者にとってもっとも望ましい医療を適切かつ十分に提供することを目的として、臨床における倫理に関する方針を定める。

1.患者の人権を最大限尊重するとともに、患者と病院職員が協力し、患者の利益を追求するための最善の医療を提供する

  • 患者の立場に立った対応を常に心がけ、良好な信頼関係を保つ
  • 医療内容やその他必要な事項について、患者に十分な説明を行う
  • 検査、治療方法などの同意や選択にあたっては、患者の自己決定権を尊重する
  • 患者の個人情報などプライバシーを保護し、職務上の守秘義務を遵守する

2.患者個人の信条や価値観に十分配慮した上で、生命倫理に関する関係法令、ガイドライン及び院内規約の実施手順に従った医療を実践する

  • 宗教上の理由から輸血を拒否される患者には、患者の意思を尊重し可能な限り輸血をしない治療になるよう努力をするが、生命維持のために輸血が必要であると医師が判断した場合には輸血をするという考えで対応する(相対的無輸血)
  • やむを得ず身体抑制をする必要がある患者には「身体抑制マニュアル」に従い慎重に対応する
  • 緩和治療の対象となる患者に対しては、日本緩和ケア医療学会のガイドラインを指標とし、家族の意向にも十分配慮し対応する

3.医学及び医療の進歩に必要な研究の実施や、倫理的な問題を含むと考えられる医療行為などについては、院外有識者を加えた当院「倫理委員会」において、倫理的・科学的観点から十分な検討を行う

  • 医学的臨床研究などの実施にあたっては、「倫理委員会」において審査し、事前にその適否を判定する
  • 生命の尊厳などに関する倫理的な問題を含むと考えられる行為などについては「倫理委員会」においてその妥当性を審議し、最良の方針を決定する

具体的な倫理的課題への対応方針

  1. 意識不明・自己判断不能患者への対応について
    意識不明や判断能力のない患者においては、緊急事態で生命に係わる場合で、かつ家族等関係者に連絡がつかない場合を除いて、家族など適切な代理人の同意を得て治療に必要な判断と決定を行います。
    なお、家族など適切な代理人がいない場合には、患者にとって最善の利益となる方向で治療を行います。
  2. 検査・治療・入院の拒否、指示不履行について
    検査・治療・入院等の必要性並びに利益と実施しない場合の負担と不利益について、患者に十分な説明を行っても医療行為を拒否した場合は、患者の自己決定を尊重します。
    ただし、感染症法等の規定に基づき、治療拒否が制限される場合があります。
  3. 輸血拒否患者への対応について
    宗教上の理由などから輸血を拒否される患者には、相対的無輸血の立場をとります。相対的無輸血とは、患者の意思を尊重し可能な限り輸血をしない治療になるよう努力をしますが、生命維持のために輸血が必要であると医師が判断した場合には輸血をするという考えです。
  4. 身体拘束について
    やむを得ず身体を拘束し、行動を制限する必要がある患者には、「身体拘束予防ガイドライン(2015年:日本看護倫理学会臨床倫理ガイドライン検討委員会)」に従い、適切に対応します。
  5. 終末期医療について
    終末期の医療・ケアについては、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン(2015年:厚生労働省)」に従い、患者・家族と相談のうえ、患者の意思に基づいた医療を行います。また、可能な限り、疼痛やその他の不快な症状を緩和し、精神的・社会的援助も含めた総合的な医療・ケアを行います。
  6. 心肺蘇生不要(DNAR)の指示について
    心肺蘇生術(CPR)の有効性について、終末期・老衰・救命不能な患者または意識回復が見込めない場合、患者やその家族に対して十分な説明をしたうえで、心肺蘇生術を行わないことに同意された場合は、その意思を尊重します。
    ただし、いかなる場合も積極的な安楽死や自殺幇助は認めません。
  7. その他の倫理的問題について
    その他の倫理的問題については、「臨床倫理の基本方針」に従い判断しますが、必要に応じて「倫理委員会」で審議を行い、その方針に従います。